美浜原発水蒸気漏れ事故について

月9日に起りました事故におきまして亡くなられた方に対し、
慎んでお悔やみを申し上げます。


原発と共生

 私が生まれる前から美浜原発は稼働しており、大阪万博で初めて電気を送ったことが有名です。私を含めて美浜町民は今回の事故について大変なショックがありました。今までも度々事故がありましたが技術的なこともありますが全て原因は人災であり、原子炉稼動中に初めて死亡者をだす事態となりました。
 死者が出たことを知った私は直ぐに名前を確認しました。知人・友人・親戚思い当たる名前を全て照らし合わせながらテレビを見ました。私だけではないはずです。テレビを食い入るように見た人は。

見えない被害

 今回は多数の被害者を出した事故ですが、放射能は漏れていない状況ですがかなりの風評被害がありました。大きく報道された翌日聞いた話ですが民宿などの宿泊にかなりキャンセルがありました。8月10日に行われるはずだった花火大会も急遽中止になりました。

 「どこの出身ですか」このような言葉を聞くたびに心にトゲが刺さる日々が続くのです。

 美浜町民であること福井県民であることの自尊心を構築できない人が増えていきます。私が福井を出て県外で暮らし始めたのは高校を卒業した93年の4月でした。初対面の相手に自分の出身地を告げる機会においてむげに「原発事故った所ね」というあまり気持ちよくない応えを度々受ける日々が続くと心が縮こまりました。

 91年2月、美浜原発2号機で蒸気発生器の細管破断事故が起き、国内で初めて緊急炉心冷却システム(ECCS)が作動。放射能を含む1次冷却水が2次冷却水系に大量流出し、放射能が大気中に放出されました。この時の連日の報道が2年後の私の旅立ち直後そしてしばらくの間それは尾を引いていたのです。

 自分の出身地を告げることに引っ込み思案になると人間関係の構築に上手くいかないことが多々あると思います。初対面の人と会話する時の話題に大きく寄与するであろう出身地を自らの話題からをかき消すことは福井にとって美浜にとって大きな被害となります。私が経験したことは同じ世代で多くの人が他県で経験したはずです。福井から放たれた・これから放たれる多くの人材が私と同じ気持ちになったと思うと居たたまれなくなります。

立地を活かす

 原子力発電所が立地している人が全て経験するわけではないのでしょうが郷土愛を失うかもしれない機会はぜひとも減らせねばなりません。
 今回の事故以来長い時間色々と考えさせられました。関西電力社員も大きなショックだったと思います。HPという表現の場に私の考えを載せてもいいのかとも悩みました。私が悩み考え抜いた結果はまだまだ明確なものは何ひとつありません。
 今回の事故は原発の立地を活かすことを考える上で根底を揺るがすものとなりました。私にとっては原発ありきの考えしかありませんでしたが初めての感覚にもなりました。

 今回の経験を私自身に活かすことも考え抜きましたが正しい活かし方かどうかも分かりません。電力は多くの人間の生命や生活を成り立たせるための安定供給という大きな使命があります。私自身人も生命に大きく関わる食糧生産に携わる立場です。多くのお客様に対して安定供給することは私自身の大きな使命でもあります。安心・安全における電力生産と食糧生産に大きな差はないはずです。

 私がこの地で生きていくうえで直ぐに提出出来ない宿題をもらったというのが今の正直な気持ちです。
                                           西野 顕樹著


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